ヤクシマザル調査マニュアル参考資料

運転手マニュアル

ヤクザル調査が安全かつ効率的に遂行される上で、車の安全な運転はとても重要です。運転手も同乗者も以下の点に十分な注意を払って、安全無事に調査を成功に導きましょう。

1.下界にて
  • 集落に入るときには、時速30kmまで、走行速度を十分に落とす。
  • 耕運機に注意する。車とは動き方が異なり、また後方への注意はあまり払われていない。追い越し時には、速度を上げすぎずに、急な方向転換に対応できるように注意する。
  • 「わ《ナンバーのレンタカーに注意。旅行中の気分の高揚から煽られるかもしれないし、やたらとのんびり走るかもしれない。いずれにしても、相手は慣れない車を運転しているので、注意する。
  • カーブミラーを過信しない。多雨のために、汚れていたり、台風のために、曲がっていたりする。

2.西部林道で
  • 二車線地区で、車を停車するときには、後方から来る車に注意。私たちがサルを見ようと停車していることを、他の通行者は知らない。
  • 停車している車に注意。サルやシカを見ていることがある。こちらが追い越そうとしていることは、相手にとって自明ではない。
  • 調査中の研究者に話しかけない。静かに、ゆっくりと通過する。
  • 動物に注意。動転したシカは道路をまっすぐ走って逃げようとするので、追いついて当たらないように注意。雨後の林道にはヒキガエルが出ていることもある。

3.林道に入る前に
  • 車体の下側を見て、横方向、縦方向で下に出っ張った部分を確認する。
  • 荷物を積んだ状態で、前後左右どこが一番沈んでいるか確認する。
  • ジャッキ、レンチ、スペアタイヤはそろっており、ちゃんと使えるか、確認する。2007年、スペアタイヤととめているナットが、車載のレンチと合わなかったため外せず、歩いて下山したことがあった。

4.いざ林道にて

4-1. 全般

  • いつもよりもシートに深く座る。その分、シートを少し前に寄せる。ただし、ハンドルに寄りかかるほどには前に寄らない。車が はねたときに顎を打つ。
  • 基本は三点支持。車重を対角の二輪で支え、プラス一輪でバランスをとる。残りの一輪で障害物を乗り越える探り足とする。
  • 左右の車体間隔に注意を払い、林道の幅員を十分に活かす。路傍の草や細い枝に擦れても、さほど傷にはなりにくい。
  • 視線は遠くに。普段の運転と同じようになるべく遠くを見て、広い視野を得る。危ないと思うところばかりを見つめていると自然と車がそこに進んでいくので、とくに要注意。
  • 何台か一緒に林道を運転するときは、必ず後ろの車がついてきていることを確認しながら走行する。壊れたときには他の車の助けが必要。2003年、後ろの車がパンクして動けなくなったことに気づかず、終点まで行ってしまった車があった。林道では窓を少し開け、クラクションの音に注意。
  • 対向車に注意。8-16時の時間帯には調査隊以外の車が林道を通行する。この場合は、下道と同じく、キープレフト。相手の方 が大きい車の場合は、こちらがすれ違える場所までバックして譲るのがマナー。
  • 曇天時、雨天時には必ずヘッドライトを点灯する。

4-2. ブレーキ
  • 急ブレーキを踏まない。もっとも車体が沈むのは、下り坂でブレーキを踏んだとき。このときに車の底を打ちやすい。
  • カーブを曲がるとき、ブレーキは慎重に。
  • エンジンブレーキはなるべく使用しない。こまめにブレーキを踏むか、ポンピングを多用して、ゆっくりと速度を落とす。
  • 突然シカが現れても、急ブレーキは踏まない。急ハンドルも厳禁。シカと当たってボンネットが凹むことより、急ブレーキによるスリップが恐ろしい。

4-3. 溝の金属製のフタ
  • 横断溝の金属製のフタに細心の注意を払う。これで底を打ってオイル漏れを起こし、走行上能になることが、林道でもっとも起きやすい大きな事故である(1995年、1996年、2007年に発生)。下りのときに底を打ちやすい。横断前に十分減速し、そろりそろりと通過する。横断中にブレーキを踏むと車体が下がって底を打つ。高速で駆け抜けると、ふたが勢いで跳ね上がって底を打つ。
  • 石で底を打っても車は容易には壊れないが、金属のフタで打つと底が割れてオイル漏れする。また、フタのカドは意外と鋭利でタイヤをパンクさせる。
  • ぴったりとはまっていない溝のフタは、車輪が載ると浮き上がり、溝から外れる。前輪でずらしたフタに車の底や後輪が当たって、オイル漏れしたり、パンクするかもしれない。

4-4. クラッチ
  • 半クラッチは多用しない。とくに、半クラッチでアクセルを大きくふかすことは厳禁。一瞬にしてクラッチが焼きつき、走行困難になる。2007年に発生し、車は入院。
  • 荷重が大きいので、半クラッチでも十分なパワーは得られない。上り坂に入る前にローで十分な加速を得ておくことが望ましい。
  • 下り坂では車の自然な動きに合わせて、ギアチェンジし、半クラッチを使わない。

4-5. パンク
  • パンクに気がついたら、なるべく平坦なところまで粘って車を進める。
  • タイヤの交換は、マニュアルをよく読んでから。マニュアルがない車の場合、あらかじめ自動車工場で聞いておく。ときどき、左ねじの場合がある。知らずにレンチを無理に回していると、ねじがねじ切れ、交換上能になる(1997年に発生)。
  • ほかのタイヤに車止め(なければ大きめの岩)をかませる。ジャッキを設置する場所の地面を固める(平たい岩をこけないように置くとか)。
  • 交換のおおまかな流れ:パンクしたタイヤのねじを緩める(ネジの向きに要注意)→ジャッキで車を持ち上げる(サスペンションの付け根あたりが固定位置)→タイヤをはずす→スペアタイヤを取り付け、軽くネジ止め(レンチを蹴らない。ジャッキが倒れる危険)→ジャッキを下げて、外す→しっかりとネジ締める

4-6. ハンドルさばき
  • ハンドル内側に親指を入れない。タイヤが岩などに乗り上げたときに、急なキックバックがあり、親指を骨折する危険がある。
  • 片手運転はありえない。教習所で習った通りの基本的なハンドルさばきを心がける。スムーズなハンドリングを下道でも心がけて練習しておくと良い。

4-7. でこぼこな林道
  • 地面のひび割れは、跨いで通過する。林道を縦に走る溝は、左右の車輪の間を通るように乗り切る。
  • 右の車輪に合うようにコンクリートで固められた道路でカーブする際には、いつもの感覚よりも遅めにハンドルを切る。
  • 前輪を同時に乗り上げない。盛り上がった部分を通るときには、左右同時ではなく、近いほうから順番にタイヤを乗せて通り過ぎる。同時に乗り上げると、底を打ち付けやすい。
  • ぬかるんだ道では、前の車が通った道筋をなぞって、なるべくすばやく停まらずに通り抜ける。ただし、急な加速はスリップの原因になる。また、前の車のスリップ跡は、自車も滑りやすいので、避けられたら避ける。
  • 多雨時には、路上を排水が覆って、地面のでこぼこが見えにくい場合がある。あらかじめ、危なそうな場所は、安全に通れるときに確認しておく。

4-8. 路上の落石
  • 比較的大きな石が落ちていたら、車を降りて、動かすべきである。このときのために、軍手を一組以上、備えておくと良い。
  • どうしても避けられないときには、タイヤの真芯で踏んで通る。タイヤの走行面はワイヤーで補強されているが、縁や側面は薄く、擦れに弱く、パンクの原因になりやすいので、下手に脇を通ろうとしない。

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